30代共働き・世帯年収1,000万円台で、8,000万円の中古マンションを検討している。でも35年ローンだと月々の返済がきつい。50年ローンを使ったらどうなるのか——そう思って調べ始めた方のために、この記事を書きました。
取り扱い銀行・審査基準・35年との比較・メリットデメリットまで、事実ベースで整理しています。「自分のケースだとどうなる?」は後半のシミュレーションで確認してください。
なぜ今、50年ローンが登場したのか
住宅ローンは長らく「最長35年」が当たり前でした。それが変わってきたのは、マンション価格の高騰が主な理由です。
Background
- 国土交通省「不動産価格指数」によると、2024年6月時点でマンション指数は約202(2010年=100)。約15年でほぼ2倍になりました
- 建築コストの上昇(人件費・ウッドショック・省エネ基準義務化)も価格を押し上げています
- 物価高・増税で手取りが減少する一方、購入希望者は増えている
- 20〜30代の持ち家率が高まり、若年層向けの「月々返済を抑えたい」ニーズが拡大
こうした背景から、返済期間を伸ばして月々の負担を下げる選択肢として50年ローンが登場しました。もともとは地方銀行が中心でしたが、2023年以降はネット銀行も相次いで参入しています。
どの銀行が取り扱っているか
2026年7月時点の情報です。各行の公式発表・公式サイトをもとに整理しました。金利・条件は変更される場合があるため、必ず各金融機関の公式サイトで最新情報をご確認ください。
50年ローンを取り扱うネット銀行
| 金融機関 | 50年取り扱い開始 | 金利上乗せ(35年超) | 金利タイプ | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 住信SBIネット銀行 | 2023年8月〜 | あり(詳細は公式参照) | 変動 | 同行公式サイト |
| auじぶん銀行 | 2025年1月14日〜 | +0.1%(35年超) | 変動 | 同行プレスリリース(2025年1月) |
| PayPay銀行 | 2025年7月1日〜 | 公式サイト参照 | 変動 | 同行プレスリリース(2025年6月) |
| SBI新生銀行 | 2025年11月17日〜 | +0.1%(35年超) | 変動(半年型) | 同行プレスリリース(2025年10月) |
| 楽天銀行 | 先行実施(時期は公式参照) | あり(35年超) | 変動 | 同行公式サイト |
| UI銀行 | 先行実施(時期は公式参照) | 公式サイト参照 | 変動 | 同行公式サイト |
メガバンク・大手銀行の状況(2026年7月時点)
メガバンク・りそな・信託系大手は、現時点で50年ローンの取り扱いはありません。最長期間は40年または35年です。
| 金融機関 | 最長借入期間 | 金利上乗せ | 出典 |
|---|---|---|---|
| 三菱UFJ銀行 | 40年 | なし(40年でも上乗せなし) | 三菱UFJ銀行公式「借入期間40年」ページ |
| 三井住友銀行 | 35年 | — | 三井住友銀行公式サイト(Money VIVA) |
| みずほ銀行 | 35年 | — | みずほ銀行公式サイト(借入期間コラム) |
| りそな銀行 | 40年(変動・一部固定) 超長期固定は最長35年 |
なし | りそな銀行公式サイト(2025年7月〜拡大) |
| 三井住友信託銀行 | 40年 | なし | 三井住友信託銀行公式「借入期間40年」ページ |
※ 2026年7月時点の各行公式情報をもとに作成。金利・条件は変更になる場合があります。
※ 三菱UFJ・りそな・三井住友信託の40年ローンは、借り換えには適用されない場合があります(三菱UFJ銀行は「借り換えは35年超の対象外」と明記)。
Check
「フラット50」という選択肢もあります。住宅金融支援機構(フラット35を提供する公的機関)には「フラット50」という商品があり、長期優良住宅の認定を受けた物件に限り、最長50年の全期間固定金利で借りられます。「50年かつ固定金利」を希望する場合は唯一の選択肢ですが、対象物件が限定されます。
出典:住宅金融支援機構公式サイト
Check
35年超の借入に「上乗せ金利」がある点は重要です。auじぶん銀行・SBI新生銀行はともに35年超で+0.1%。一見小さく見えますが、元本が大きく・期間が長いと総返済額への影響は無視できません(後述のシミュレーション参照)。
なお、三菱UFJ・りそな・三井住友信託の40年ローンは上乗せ金利なしと明記されています。
35年ローンとの審査の違い
完済時年齢の壁
住宅ローン審査で最も重視される項目の一つが「完済時年齢」です。国土交通省の調査では、98%超の金融機関が審査で完済時年齢を考慮しています。
50年ローンを組める「実質的な上限年齢」は以下のように決まります。
| 借入時年齢 | 完済時年齢(50年後) | 50年ローンの可否の目安 |
|---|---|---|
| 20歳 | 70歳 | + 組みやすい |
| 25歳 | 75歳 | + 組みやすい |
| 30歳 | 80歳 | · 完済80歳ちょうど(ギリギリ) |
| 35歳以上 | 85歳以上 | – 多くの金融機関で不可 |
多くの金融機関は完済時年齢の上限を「80歳」に設定しています。50年ローンは実質、30歳前後までの方が対象になる商品です。35歳を超えると、そもそも期間50年を選べないケースがほとんど。
35年ローンとの審査基準の違い
| 審査項目 | 35年ローン | 50年ローン |
|---|---|---|
| 申込年齢 | 〜70歳未満(多数) | 同様(ただし完済時年齢で実質制限) |
| 完済時年齢 | 80歳未満(多数) | 同じ基準(期間が長いため若い人向け) |
| 金利 | ベース金利 | 35年超で+0.1%前後の上乗せあり |
| 返済比率 | 年収の35〜40%以内 | 同様(月返済が下がるため通りやすい面も) |
| 団体信用生命保険 | 原則必須 | 同様(疾病保障付きは加入年齢制限あり) |
| 金利タイプ | 変動・固定どちらも選べることが多い | 現状は変動金利のみの商品が多い |
Check
50年ローンは現状、固定金利の選択肢がほぼありません。フラット35(住宅金融支援機構)は最長35年のため、50年の固定金利ローンは事実上存在していません。「金利が上がったとき怖い」という方は、ここが大きなネックになります。
対象になりやすい物件・なりにくい物件
築年数と借入期間の関係
「50年間、この建物が担保として使えるか」——金融機関はここを見ます。金融機関によっては、「50年 − 築年数 = 最長借入期間」という式で期間を制限するところもあります。
| 築年数 | 残存耐用年数の目安 | 50年ローンへの影響 |
|---|---|---|
| 築5年以内 | 42年以上 | + 50年ローン対象になりやすい |
| 築10〜20年 | 27〜37年 | · 金融機関によって35〜50年の幅あり |
| 築30年(新耐震基準) | 17年 | – 最長20年前後に制限されるケースも |
| 旧耐震基準(1981年以前) | — | – 耐震適合証明がなければ審査通過が困難 |
※ RC造(鉄筋コンクリート)の法定耐用年数は47年。ただし金融機関の査定は銀行によって異なります。新耐震基準(1981年6月以降)の物件なら最長35年を通している機関が多数。
50年ローンが組みやすい物件の特徴
+ 組みやすい
- 築浅(目安:築15年以内)の中古・新築マンション
- 新耐震基準(1981年6月以降)適合物件
- 管理体制がしっかりしたマンション(長期修繕計画あり)
- 担保評価が高い都市部・駅近物件
– 注意が必要
- 旧耐震基準(1981年5月以前)の物件
- 自主管理・長期修繕計画未整備のマンション
- 専有面積30㎡以下のワンルーム(審査そのものが難しい場合も)
- 築30年以上で担保評価が低い物件
メリット
01
月々の返済額を減らせる
最大のメリットはここです。同じ借入額なら、35年より毎月の返済額が下がります。月々の余裕が生まれる分、教育費・老後積立・日々の生活費に回しやすくなります。
02
返済比率が下がり、審査が通りやすくなるケースがある
住宅ローンの審査では「返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)」が重視されます。月々の返済が下がると返済比率も下がるため、借入可能額が上がる場合があります。
03
繰り上げ返済で柔軟に対応できる
50年にしておいて、収入が増えたタイミングで繰り上げ返済をすれば、実際の完済を早められます。「とりあえず月々の負担を抑えながら、余裕があれば返す」という使い方ができます。
04
若いうちに広い・良い物件を選べる可能性が広がる
20代で購入する場合、35年ローンより月々の返済が低くなるため、予算の上限を引き上げやすくなります。「今の家賃+αくらいで、もう少しいい物件に住める」ケースが出てきます。
デメリット・注意点
01
総返済額が大幅に増える
返済期間が長くなる分、支払う利息の総額は増えます。35年ローンとの差は金利・借入額によって数百万〜1,000万円以上になることもあります(シミュレーション参照)。
02
元金が減りにくい
毎月の返済額のうち、最初のうちは「利息分」の比率が高くなります。元金がなかなか減らないため、売却や借り換えを考えたときに「残債が多い」という状態になりやすいです。特に購入後数年は注意が必要です。
03
金利が35年より高くなりやすい
35年を超えると上乗せ金利(+0.1%前後)が発生する金融機関がほとんどです。「元金が多い×期間が長い×金利が高い」の組み合わせで、総コストへの影響は見た目以上に大きくなります。
04
定年後も返済が続く
30歳で50年ローンを組むと、完済は80歳。年金生活に入っても返済が続く計算です。老後の収入で本当に払い続けられるか、シミュレーションが不可欠です。
05
変動金利のみの選択肢になりやすい
現状、50年の固定金利ローンはほぼ存在しません。変動金利で組む場合、金利上昇局面で月々の返済額が増えるリスクを伴います。日銀の利上げ動向とあわせて考える必要があります。
06
対象物件・年齢が限られる
完済時年齢の制限から、実質的に30歳前後が上限の商品です。また築古物件では期間制限がかかりやすく、「50年ローンを使おうと思っていた物件に適用できなかった」というケースもあります。
返済シミュレーション(35年 vs 50年)
同じ条件で比較すると、月々の差と総返済額の差がわかります。
【前提条件】 借入額:5,000万円 / 金利:35年ローン 0.9%、50年ローン 1.0%(+0.1%上乗せ)/ 変動金利・元利均等返済
| 35年ローン | 50年ローン | 差額 | |
|---|---|---|---|
| 月々の返済額(概算) | 約138,000円 | 約115,000円 | 約▲23,000円 |
| 総返済額(概算) | 約5,796万円 | 約6,900万円 | 約+1,104万円 |
| うち利息総額(概算) | 約796万円 | 約1,900万円 | 約+1,104万円 |
※ 上記は試算の一例です。実際の返済額は適用金利・返済方式・保険料等によって異なります。必ず各金融機関のシミュレーターでご確認ください。
月々は約23,000円の節約になる一方、50年で見ると利息総額が約1,100万円増えます。繰り上げ返済をしない前提での比較なので、「実際は繰り上げる」という場合は差が縮まります。
まとめ:どんな人に向いているか
+ こんな人に向いている
- 20〜30歳前後で住宅購入を検討している
- 今の収入では月々の返済が重く、余裕を持ちたい
- 繰り上げ返済を積極的に活用するつもりがある
- 築浅・新築の物件を検討している
- 将来の収入増が見込める(昇給・ダブルインカム等)
– こんな人は慎重に
- 35歳以上で購入を検討している(そもそも選べない可能性が高い)
- 繰り上げ返済の見込みがなく、50年払い続けるつもりの場合
- 金利上昇リスクが気になる(固定金利の選択肢がない)
- 築古・旧耐震の物件を購入予定
- 老後の収入が不明確なまま計画を立てている
Memo
50年ローンは「月々を抑えるためのツール」です。繰り上げ返済との組み合わせで活用できると、メリットを活かしやすくなります。
一方で「とりあえず50年」は、総コストと老後リスクの面で慎重に考える必要があります。
幡ヶ谷・初台・笹塚エリアで中古マンションを購入検討中の方は、物件の築年数・金融機関の条件・ご自身の年齢を整理することが最初のステップです。気になることがあればお気軽にご相談ください。